景観の基準

来年に京都市内で新築工事を予定させて頂いている住宅がございまして、現在、その建物の申請について書類作成等を行っておりますが、京都市では、2007年ごろから景観に関する基準が見直されており、その基準が世間一般的に厳しい内容と言われております。

ただ、この厳しいと言われる基準は、エリアによっても規制内容がかなり異なり、案外、普通にハウスメーカーが建てるような住宅でもOKなエリアも多く存在します。

一方で、風致地区と指定され、更には特別の制限が定められた特別修景地域と呼ばれるエリアは、俗に言う厳しいエリアに当てはまりまして、いわゆる京都らしい景観が求められます。

今回、申請を行うエリアは、まさに特別修景地域であり、色々と検討を重ねながら進めているのですが、その中で“基準を定める責任”や“公平性”は、改めて大切であると考える機会になりました。

先ず、私の個人的な意見としましては、そもそも景観基準を設けるという事は、その都市の街並み形成において非常に意義があるもので大賛成です。特に京都市のような歴史的風景の保存を重要視する街では欠かせないものであると思います。

又、これには反対意見の方が多いのかもしれませんが、将来的な街並みを考えた時に、出来るだけその価値を高めていくには、京都市全域が特別修景地域のような基準であっても良いように思うぐらいです。

ただ、そういう思いが強いからなのかもしれませんが、行政が定める基準というものは、誰にでも分かりやすい内容でないといけないと考えています。

それでは本題ですが、これから行う申請地の場合は、屋根材、外壁材、窓の色彩には一定の決まりがあり使用できる色は限られます。

屋根材は瓦を使用し、いぶし瓦以外の場合、“濃い灰色又は黒”と基準書に記載がありますが、マンセル値での記載がありません。(ただし、市の窓口では明度3までと決めているそうです)

次に外壁材ですが、こちらにつきましては、白しっくいと焼杉板以外の場合、“薄茶色の砂壁状吹付けで仕上げられているもの”と記載があり、併せてマンセル値で使用できる範囲を定めています。

そして窓ですが、木製の場合は木の色のままで、それ以外の材質の場合は、“こげ茶や薄茶色又は黒色”との記載があり、マンセル値での記載はありません。また、市の窓口でもマンセル値での決まりはありませんとの回答でした。

『こげ茶、薄茶色、黒色』いずれもどのようなものか想像はつくと思います。たしかに、国産大手サッシメーカーの製品を使用する場合には、この3色はバリエーションとして、大体は存在しますし判断は難しくないかもしれません。

しかし今回は、出来るだけ性能が高く耐久性や意匠性といった理由から国産大手サッシメーカーの製品では無くて、ドイツ・UNILUX社の樹脂サッシを使用したいと考えていました。

ただ、その製品の国内在庫として販売されているカラーバリエーションがダークグレーとホワイトの2色のみです。

当然、ホワイトは使用できませんが、ダークグレーは黒の解釈次第では望みがあるかもしれないので、再度、市の窓口に確認すると、やはり明確な基準が存在しません。

それでは、過去の事例として黒系で一番明るいとされる色の使用を確認すると、リクシルで販売される“ダスクグレー”という色は使用OKになっているみたいです。

早速、ダスクグレーのサンプルをとって確認してみると、黒よりも優しく良い色です。最近追加された色のようです。でも、マンセル値でいう明度は3よりも明るいように見えます。因みに、UNILUX社のダークグレーは、ダスクグレーよりも少し明るいです。

UNILUX社のダークグレーについて最終的には、申請後の行政の判断になるようですが、色の感覚は人によって見え方が様々であると思います。

多分、今後も同じような事で、市窓口への相談はあるはずです。窓口担当者の方も数年で代わっていく訳ですし、その時々で判断が変わってしまうかも知れません。

屋根、外壁には明確な値での基準があって、窓には明確な値が無い、この事によって難し判断が増えていくのだろうなと思います。明確な値がある方が、分かりやすいとは思いつつ、明確で無い事によって時代の変化に対応できる事もでてくる?かなと少し思ったりもしますが、どちらが正解なのでしょうか?

いずれにしましても、基準を定めるという事は、責任を伴いながら常に公平性を保たなければいけませんので、大変な事でありますね。

蘆塚

2024.12

サスティナブル

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