日本の住宅のロングライフ化について

早くも10月が終わろうとしており、だいぶ秋も深まってきましたね。

さて、前回からの続きで、日本の住宅の耐久性についてですが、日本の住宅の寿命が短い(耐久性が低い)問題は何を改善すべきか?そこを考えていきます。

改善すべき箇所は、本当に色々とあると思います。その中でも、住宅の取り壊しを決断させる理由を考えると、大きくは以下の感じになるのかなと思います。

1.耐震性の不安

2.構造の腐りやシロアリ被害

3.温熱環境の不満

4.見た目の劣化

5.間取(レイアウト)の問題

5点あげさせて頂きましたが、順番に見ていきますと、1.耐震性の不安 は、1995年の阪神大震災以降、被害の大きい地震が各地で起こっており、この28年間だけみても、皆さんの地震に対する意識に大きな変化があったと思います。耐震性の基準は、阪神大震災以降に、何度も見直しが行われて、その部分だけみると改善されている感じですので、1995年以降に建てられたものは、構造材に傷みが生じていなければ寿命は延びている傾向にあると思われます。そして、これから新築するのであれば、耐震等級3という基準で建ていくことが望ましいのではないでしょうか。

2.構造の腐りやシロアリ被害 についてですが、1.耐震性の不安 にも絡む事かと思います。いくら耐震性(設計上)が優れていても、構造材に傷みがあると、実際には、その耐震性を保持する事は出来ず、意味を成しません。では、傷みは、なぜ起こるのでしょうか?

腐りやシロアリ被害は、そもそも不健康な木材に起こります。不健康とは、人の身体と同じで、環境が悪いとなりやすいです。木材にとっては、雨漏れや結露による水分がまさにそれで、先ずは、そういう水分が、侵入しない、また、発生させない環境づくりが大切です。

その為には、外部の防水層、通気層の材料選定(シート類)や確実な施工、又、同様に気密ラインでの確実な気密処理や調湿性などにも気を配り施工を行いたいものです。

私が高性能住宅造りに携わっていて思う事は、この問題を確実にクリアしなければロングライフ化は難しいという事です。

しかし、この部分の施工箇所は、お家が完成してからでは隠れて見えない為に、殆どの方が興味を持ちません、でも、本来は、この部分にこそ気を遣い、材料にも費用をかけるべきです。ユーザーの皆さんにも、もっと構造見学などで何が正しいかを知って頂いて、構造について真剣に学んで頂きたいと思います。

3.温熱環境の不満

この問題も、日本では、古い感覚のまま放置されている事柄の一つですが、温熱環境に対しての不満は、正解が分からず、本当は不満であることに気付かずに生活されているケースが多々あると思われます。

しかし、正解が分かった途端に、それは大きな不満となり、大規模なリフォームなのか、建て替えなのかという問題に発展していき、悩むことになります。

結局、既存住宅で抜本的に温熱環境を変えるとなると、リフォームにしても、新築にしても、断熱性能と気密性能をしっかりと担保させないと、その不満は解消出来ないですし、中途半端な断熱性能や気密性能は、建物への結露問題にも繋がる可能性がありますので、将来、後悔のないように確実な施工方法で、しっかりとした性能を手に入れておきたいです。

これから工事を予定される方は、要検討です。

4.見た目の劣化

この事は、定期的なお手入れや補修工事がつきものなのかも知れませんが、外装材や内装材の選定も大切です。これまで日本の住宅は、高度経済成長期に誕生した新建材とよばれる、石油由来の製品を多く使っていました。確かに施工は簡単で、施工スピードは上がるメリットがあったかもしれませんが、最大の欠点は、経年での劣化です。

例えば、天然の木や石などといった材料は、経年での変化として、見た目の雰囲気に深みが増していくのに対して、石油由来の製品は、変化ではなく劣化として、どちらかといえば汚くなっていく印象があります。

いずれの材料も定期的なお手入れ、補修工事は必要になりますが、それを行ったうえでも、数十年後の姿には、結構な差が生じると思いますので、始めに質の良い材料選定が賢明かとは思います。そうする事によって、将来的にはメンテナンスだけで済み、余計な貼替工事などは行う必要がなくなり、結果的に経済的になる事もあると思います。

5.間取(レイアウト)の問題

どうしても時代の流れで、社会全体でライフスタイルというものが変化するときがあります。昭和の時代であれば、畳中心の間取りが多かったように思いますが、令和の現在では、畳の部屋は1つあるか無いかという状況です。この先、どのような変化があるかは分かりませんが、躯体さえ、しっかりとしていれば、将来は、内装の変更や、簡単なレイアウト変更によって、その時代のライフスタイルにも対応していけます。

もちろん、個人宅は、そのお家の人が使用する前提で建てますので、施主が良いと思う間取で建てて良いと思います。しかし、70、80年も使用できる前提の建物であれば、次の世代、又は、別の世帯が使用するかもしれないという事も、少し視野に入れて、将来的にアレンジできるような間取りにするのも一つの方法かもしれません。

以上、日本の住宅のロングライフ化を図る為には、何を改善すべきかを書かせて頂きましたが、皆さんはどのように思われますか?

ロングライフ化は、現在の日本においては、正直なところ、まだまだ関心が薄いように思います。でも、実現していく事で、建物としての生涯かかる費用(建築費、メンテナンス費)は安くなると考えられますし、断熱性能、気密性能が高い事で生涯の光熱費も低く抑えられます。そして、何より快適な温熱環境で過ごせるので、色々とメリットが多いです。

どうか、少しずつでもロングライフ化が広がっていけばいいですね。

蘆塚

2023.10