医療施設を造る時の考え方
今回も前回に続き、あしづかホームで設計・施工させて頂いたエコ医療施設の事を書かせて頂きます。
病院・クリニックといった医療施設には、恐らく殆どの人が何らかの治療や検査等で伺ったことがあると思います。
私も頻度は多くありませんが、コンタクトレンズの事で眼科医院や、たまに体調を崩した時には診療所等に伺うことがあります。
その伺った際に、これは職業柄なのか分かりませんが、建物の事をついつい見てしまっているようで、特に暑い、寒いといった温熱環境や、壁の構造、内装などの意匠的なところまで気になります。
気になりますといいますか、正しくは気にならざるを得ないケースが多いです。
それは、どういう事かと言いますと、医療施設を利用する際に、比較的、待ち時間が長い場合が多いと思います。そして、大体は待合スペースにいることになりますが、その待っている間が、冬場であれば、とても寒いと感じたり、夏場であればエアコンの効きが悪く暑いと思えることが、結構な割合であります。
そこそこの滞在時間があるので、温熱環境の良し悪しが顕著に表れるのかもしれません。
また、壁の厚みが、外壁、間仕切り壁、いずれも薄く、内装については、意匠性の事には、あまり気を使わず、どちらかというと、コストダウン重視で仕様を決めたと思えるような建物が多いように思います。
これは何故なのか?温熱環境に係わる躯体性能につきましては、日本全体が遅れているので、以前の建物は仕方ないのかもしれませんが、それ以外の部分でコストダウンを図る方向にあるのは、様々な理由が考えられますが、一番の要因は、その事業主が建物に対して興味が薄いからだと思います。
それは、インテリア性とか構造とか、そういうレベルの話ではなく、サスティナブルという要素も含めて、快適性や省エネルギー性などといった長期的に必要な建物のポテンシャルについてです。
そこの意識が低いと、人間は誰しも出来るだけ安価に、出来るだけ手間をかけずに、という方向へ流されていきます。
しかし、これからの時代は、ポテンシャルが低い建物では、利用する患者さんも、働くスタッフも、ストレスを感じたり、違和感を抱くようになっていくように思います。
そのような事では、いくら、医療の技術が優れていたとしても、事業としては上手くいかない可能性もでてきますので、そうならない為にも、医療施設の建物は事業主の方が、建物のポテンシャルというものを十分に計画して進めるのが理想的ではないでしょうか。
住宅では、少しずつですが、そういう意識が広がりをみせていますので、医療施設も、そういう流れになって欲しいですね。
蘆塚
2024.07