医療施設は高気密高断熱が良い
以前より工事を進めておりました“エコ医療施設”(眼科医院さん)の現場が、ようやく完成に近づいてまいりました。平屋で240㎡以上もある建物は、あしづかホームの仕事としては異例に大きく、実際に現場を見ていると、その大きさに圧倒されます。
普段は住宅をメインに建築させて頂いており、これまで、医療施設というものを造った経験は無く、今回が初めてになります。その為、この仕事をさせて頂きて、勉強になった点が幾つかございます。
断熱や気密といった基本的な躯体につきましては、住宅と何ら変わりはありませんが、換気・空調計画というものは住宅とは少し勝手が変わります。
医療施設の場合は、不特定多数が利用するという事と、恐らく、住宅以上に衛生的でなければいけないという観点からだとは思いますが、住宅と比べると6倍ほどの換気量が求められます。又、手術室に至っては、更に、その倍ほどが必要であります。
という事は、単純に、室内から、それだけの量の空気も排出されている訳で、冷暖房といった空調からの冷気・暖気はかなりのロスを強いられています。
換気によってロスが多いという事は、当然ですが、エアコン機器の数も増やす必要がありますし、運転の仕方も風量を上げる傾向になります。
こういう事を考えていると、もしも、断熱・気密性能が備わっていない建物で医療施設を運営する場合は、一体、どれだけの電気代を毎月支払う事になるのだろう?と頭を抱えることになりそうです。
あと、断熱や気密の性能が良く無いという事は、他にも問題がでてきます。先ずは、保温する能力が低くいので、温度ムラが出来やすく、エアコン付近と離れた場所では、温熱環境が結構異なると思われます。
また、気密性能がしっかり確保されていないと、上手く室内の換気が行えません。俗に言うショートサーキットという現象が起こり、換気の排気口に近い壁や天井、窓の隙間から直接排気口に空気が流れて、その辺りの空気だけが、くるくるとショートカットしてしまい、他の部分は、あまり空気の入れ替えが出来なくなってしまいます。
恐らく、現在、建っている殆どの病院は、それほど性能が高いとは思えませんので、このような問題が発生しているのではないでしょうか。しかし、そういう決して良いとは言えない環境が普通になっていることで、特に不満や疑問を抱かず、そのまま使用されていると思われますが、今回、あしづかホームで建築させて頂いたような医療施設が少しずつでも増えていく事で、その良さが広まりスタンダードとなる日が、いつかは来ると思います。
蘆塚
2024.07