パッシブハウスジャパン近畿支部大会の事例報告を終えて その3

先週から急に涼しくなり秋めいてきましたね。

今回もまたまた事例報告で改めて気づいた点の続きを書かせて頂きます。

パッシブハウスやそれと同様の考えで建てる高性能エコハウスは、今までの日本の家づくりから比べると、断熱施工、気密処理、部材選定、熱橋対策などさまざまな部分で気を使い施工に手間をかける必要がでてきます。

これは裏を返せば、今までの日本の家づくりはそういう部分に対して意識が低く、そこの改善を行ってこなかったという事にもなります。

それは何故なのか?理由は幾つもあると思いますが、一番大きな要因はつくり手側の都合ではないかと考えます。

現在、日本で新築住宅を建築するビルダーの種類は大きく分けると、大手ハウスメーカー(FC含む)、分譲建売系、工務店の3種類になると思います。細かくは他にもございますが...

この3つの中で、現実的にパッシブハウスを建築できる体制であるのは唯一工務店になるのではないでしょうか。

それも、考え方、技術が伴い設計ができる(又は設計事務所とタッグを組んでいる)事が条件となってくると凄く限定されてきます。

しかし、エンドユーザーの皆様が家を建てようかなと思い最初に頭に浮かび足を運びやすいのが、大手ハウスメーカーの住宅展示場なんです。そこに入っているメーカーは、パッシブハウスとは程遠い内容の建物しか建築しない会社が殆どなんです。会社・組織の規模が大きい事が仇になっているように感じてます。

パッシブハウスのような建物は精度や携わる者の情報共有・理解が無いと出来ません。現在の大手ハウスメーカーの体制では、そのあたりの徹底がなかなか難しいので現状維持のままでシフトチェンジ出来ないのでしょうね。

あとコストの問題もありますね。現状でも決して安くない価格設定なので、それが性能を上げていくことによって、一体いくらにまで価格が跳ね上がってしまうのか?

その次にエンドユーザーの皆様が行かれるケースが多いのは、分譲建売系の会社です。

分譲建売系の会社はもともと仕入れた土地を販売するセット商品に建物が存在しますので、そもそも建物に力を入れる事をしていない場合が多いのかもしれません。中にはごく少数ですが建物に力を注いでおられる会社もありますが、パッシブハウスまでとなると無理がありそうです。

ただし、本来は宅地造成からされている会社がパッシブハウスを意識して区画割りを行い街を形成する事が一番必要で一番近道なのですが、現状はなんとなく簡単に利益が得られる方法を選択している会社が多いように見えてしまいますね。

コスト面で考えると、ここに属する会社の意識が変わりパッシブハウス化が進むことで一気にコストダウンが出来るはずですが、現状それは夢のようなお話です。

と、いうような具合で日本の現状ではパッシブハウスの建築ができるビルダーは限られた工務店でしか出来ません。だからといってその限られた工務店が値打ちこいているようでは未来に広がりは生まれません。

これから、益々パッシブハウスのような建物の需要が増えていくのは容易に想像できます。

5年、10年先にエンドユーザーの皆様が望むビルダーとしての役割を果たせるかどうか、自身の会社も含め常に進化していかなければならないと改めて感じつつ、つくり手側の都合で他国よりも何周も周回遅れの状況をまねいていることに対して、少しでもいい方向に向く努力を微力ながら行っていきたいです。

蘆塚

2020.09