パッシブハウスの考え方

前回に引き続いてパッシブハウスのことを書かせて頂きます。

画像の模型写真は、以前(計画段階)に作製したもので、実際の建物とは形状が異なりますが、これから建築するパッシブハウスが完成すると、2棟が並ぶ姿は概ねこのような感じになります。

2棟とも前面道路に対して斜め向きになっていますが、これこそが、この2区画が並んでパッシブハウスになる為に区画割から考えられたから可能となった配置です。

因みに、2棟とも真南を向いております。(道路は南西になります)

パッシブハウスには、優れた断熱・気密性能と換気計画に加えて太陽の日射エネルギーを最大に利用するといった考えがあります。

その為、建物は真南に向くのが最も効率が良く、窓からの日射が冬場の暖房エネルギーになり、年間暖房需要の値に対して有利に働きます。(夏場は、基本的に、遮蔽する考え)

もしも、この2区画の割り方が、道路に対して垂直に割られていると敷地形状から比較的間口が狭く奥行きのある区画が2つ並びますので、必然的に建物間口も狭くなり建物を真南に向ける事も困難になります。

更には、2区画の右側にも既存の住宅が建っているので、2棟ともに真南側は建物の影に入り日射取得量が大きく減ってしまいます。

これでは、パッシブハウス基準をクリアすることが困難になりますので、実は、今回の区画の割り方は非常に理にかなっているという事がお分かりいただけると思います。

また、今回のように斜めに区画を割ることによって奥行方向も距離が稼げて、隣接する建物から真南方向に対して日射量を確保しやすい距離をキープできます。

したがって、本気で地球温暖化やサスティナブルというものを考えていくのであれば、本来は土地分譲の宅地造成(開発)段階から、日射取得し易くする為の何らかのルールというものを設けるべきではないかと考えます。

その規模が大きければ大きいほど、有効利用できる熱エネルギーの影響も大きい訳ですので、パッシブハウスの考え方というものを、行政はもちろん、より多くの戸数を扱うデベロッパー、ゼネコンといった企業にも知って頂き実践して欲しいところです。

ドイツでは、10年以上も前から既に街全体でパッシブハウス造りを計画し実行しているところもありますので、日本でも少しずつ個々の住宅から街規模へと、パッシブハウスの考えが広がることを期待します。

蘆塚

2024.06