断熱改修のシミュレーションしてみました

前回に引き続き断熱改修(リフォーム)の事を書かせて頂きます。

実は、最近、築25年程の建物で断熱改修のシミュレーションを行う機会がございましたので、その内容をご紹介いたします。

その建物は、木造2階の一戸建で、延床30坪前後の一般的な住宅になります。(某地元ビルダー施工)

断熱仕様としては、袋入りのグラスウールで、天井100mm、壁50mm、床下50mm、また、窓はシングルガラスのアルミサッシと、その当時に主流であった内容です。

実際に建物も拝見致しまして、天井や床下、又、壁は天井裏から見える範囲は確認しました。施工状態としては、当時としては当たり前の感じでしたが、グラスウールの隙間も多く、気密は全然処理できていない状況です。

今であれば、完全にNGですが、25年前のお家は、殆どがこんな感じだと思います。

そういう状態の建物をどのように断熱改修すれば良いか?また、どれ位の変化が生まれるか?を確認する為、先ずは温熱計算ソフト“建もの燃費ナビ”で確認してみました。

その結果、現況は、UA値が1.44で、C値は測定していないので分らないのですが、見た限りは軽―く5.0以上はあると思います。

そして、年間暖房需要は約273kwh/㎡となりまして、普段のあしづかホームが建てる新築が30kwh/㎡以下を基準としていることを考えると、エネルギー消費量が凄い事になっております。

この数字を見ると、皆さんは驚いてしまうかもしれませんが、現在、日本国内に建っている多くの建物がこのような状態です。

それでは、既存躯体を出来るだけ活かして、断熱・気密の性能をあげていくにはどのようにすれば良いか?を考えてみました。そこには、出来るだけコストもかけないという意味合いも含みます。

やはり、考え方としましては、室内側の壁、天井、床を触ることなく進めていきたいので、壁と基礎は外張り断熱するのが妥当とします。今回の計画では、壁、基礎共に50mm厚のEPSを施し、天井につきましては、現状のままでは、電気配線等が天井裏に広がっており、断熱・気密工事の妨げになりますので、既存の天井断熱は、そのまま置いておいて、新たに屋根断熱を施すのがベターと考えます。

屋根断熱の内容は、高性能グラスウールを240mm充填し、気密シートを施工するパターンにして、電気配線等を出来るだけ移設せずに済ませたいです。

あと、窓ですが、本来は樹脂か木製のトリプルガラスの窓への取替が良いのでしょうが、コストを考えると既設サッシを残し、内窓として、樹脂フレームでペアガラスのものを設置するのが良さそうです。

続いて換気計画ですが、既設は第3種の局所換気ですが、出来る事ならばダクト式にはしたいと思います。第1種か、第3種か、悩むところですが、リフォームの場合は、もともとダクト経路が確保されていない為、ダクト数が少なくてすむという理由と、あとは気密が何処まで良く出来るか分からない?という点も考慮して、第3種が無難と判断します。

そういう内容で、断熱改修後のシミュレーションを行いますと、UA値が0.52で、C値は仮に1.0としました。その場合、年間暖房需要は103kwh/㎡になりまして、現状から比べますとエネルギー消費量が6割以上削減出来る事になります。

電気代は、基本料金を含んでも半分ぐらいにはなりますので、今まで大掛かりな工事は避けたと思われていた方にとっては非常にお勧めできる内容かと思います。

新築から築年数がある程度経過すると、外壁の塗り替え等色々とメンテナスが必要になりますが、そういうタイミングで、今回、ご紹介したような外張り断熱工事を行うのは、今後、増えていくかもしれませんね。

蘆塚

2024.03